森喜朗会長の発言を放置してはならない

<森会長の女性蔑視発言は本音>

東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言は、ジェンダーギャップ指数世界121位(政治分野は144位)日本の本性を見せつけるものだった。高齢だからしかたないというような話ではない。人脈や金脈に物を言わせ、隠然たるボスとして支配力を行使している森氏は、公的場においてさえ何を言っても大丈夫という不遜さに満ち溢れている。事実、政府、JOC、スポーツ界で森氏を諫められるものは一人もなく、本人は謝罪しているのだから、を理由に幕引きにかかっている。「女は話が長いから困る」を額面通りに受け取ってはいけない。「女はしゃべるな」という意味なのだ。女が発言を抑え込まれた時代の価値を森氏は今もって微塵も変えていない。彼が示した家父長的価値観と女性蔑視が、政治・経済における男支配の価値として根深く続いている。

 

<森発言への批判の動きはめざましい>

ただ、この3日間の動きを見ると、時代は動いていることを強く感じる。「言ってはならない発言だ」という点でどの報道も足並みがそろっていた。ネットには膨大な書き込みが続いた。街頭インタビューでは性別年齢に限らず、「不適切な発言だ」「不快な気分になった」という意見が多かった。都庁には抗議の電話やメールが殺到した。都市ボランティア14名が即座に辞退した。また、20代の女性など有志11人が4日夜、組織委などに森氏の処遇検討と再発防止を求めるネット署名を始め、開始から約1日で約8万3000人の賛同者を集め今も続いている。これらの動きは、歴史的に見てもかってないほど目覚ましい異議申し立てになっている。

 理不尽なことに対してはただちに声を上げる見事な例は5日午後から欧州の在日大使館が中心となって発信している数多くの投稿だ。「#Dont Be Silent(黙らないで)」「#Gender Equality(男女平等)」。ドイツ大使館の公式アカウントは5日午後1時、十数人の職員らが左手を挙げたポーズで並ぶ写真にハッシュタグ(#)を添えて投稿。フィンランドやスウェーデン、アイルランド、ポルトガルなどの大使館や欧州連合(EU)代表部がこれに賛同し、ツイッターのほかインスタグラムやフェイスブックなどのSNSにも次々と投稿した。国連広報センター(東京)は同日夜、ハッシュタグを添え、「女性に敬意を」「沈黙を打ち破ろう。誰かが一線を越えたら、声を上げよう。父長制への無言の迎合は、受け入れてはいけません」などと書き込んだ(朝日新聞デジタル2月6日)。

 

私たちは、理不尽さに対抗できるSNSという武器をもっている。国民の「異議あり」の行動が、森氏の誤りを指摘し、辞任を含めてJOCを改革し、スポーツ界の民主化を進める力となるだろう。