ごあいさつ

 私は、現代社会の諸問題に関心を寄せて研究をしてきた社会学者です。ポスト工業化をはじめとする社会経済構造が大人になる意味と過程にどのような影響を及ぼしているかに関する研究(若者研究)や、生活困窮者の生活実態と社会政策に関する研究(貧困・生活困窮者研究)を主に手がけてきました。とくに、就職氷河期やリーマンショックによる若者の非正規労働者化や無業者化をずっと追ってきました。近年は、子どもをもつ世帯やシングル女性の貧困と社会的孤立にも関心を寄せ、政策立案にも深く関与しました。

 

 新型コロナウイルスの襲撃前の“失われた20年”で、経済格差が拡大しそれまでの時代に確立した「結婚・持ち家・子育て」がセットになった標準生活(中流生活)を営むことができない人々が増加しました。このような実態を追ってきた私は、新型コロナウイルスの襲来が、すでに社会格差が広がり生活困窮者が増加していた日本社会に、決定的なダメージを及ぼしかねない事態だということを心底感じます。

 

 生活困窮者支援制度にもとづく取組や子どもの貧困対策がようやく進み始めた頃、不幸にも新型コロナウイルス禍に見舞われたとは何とも不幸なことです。今後1年間の間にリーマンショックを上回る大量の失業者が生まれることが予想されていますが、まっさきに生活困窮するのは、コロナ禍の前から生計の維持に困難を抱えていた低所得層であることはまちがいありません。

 

 このように、すでにコロナ禍以前に脆弱化していた人々が多かった現実を見据え、これ以上、不幸な人々が増加するのを放置すれば日本社会は維持できないことを肝に銘じて対策を講ずるべきです。生命と暮らしと社会を守るために何ができるかを、皆様と共に考えていきたいと思います。

 

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