自由の気風と活躍の場がなければ女性は地方圏に住まない

【出生率は高いのに子どもの数は減る地方圏 対 出生率は低いのに子どもの数は増える東京】

人口減少が止まらない地方圏の悩みは、若者が進学や就職で県外に出てしまい、戻ってこないことだ。加えて、沖縄県を筆頭に、宮崎、島根、長崎、佐賀など合計特殊出生率が1.5を大幅に超えている10県は10年前と比較して出生率は高まっているのに、出生数は減少を続け、14歳以下の子どもの数は16万人も減った。なぜそうなるのかといえば、未婚の女性の県外への転出が男性を上回って多く、少なくなった女性によって出産が行われているからだ。

いっぽう、東京を中心に首都圏では転入者の数が転出者を上回ることが続き、出産する女性の数が地方圏より圧倒的に多いので生まれる子どもの数も多いという結果になっている。たとえば東京の女性は47千人の純増で転入超過数は男性の1.34倍である。しかも女性の方が東京に定着する傾向がある。しかしここで注意しなければならないのは、東京の出生率が1.0をやや上回るほど低く、全国最低の水準にあることだ。つまり、地方圏をはじめ各地から東京に集まった女性たちの非婚化は進み、結婚や家族形成から遠のく傾向が濃厚なのである。

それでも子どもの数が多いのは女性の数が多いからだ。

 

【なぜ女性は東京に惹かれるのか】 

地方圏と首都圏の間でこのような人口の移動が続く限り、日本の少子化の歯止めはかからず、《人口の東京一極集中 対 地方圏の人口減少》というアンバランスはますます悪化することになるだろう。新型コロナ禍によってこの悪循環に歯止めがかかるだろうか。テレワークの普及は人口の地方分散の可能性を秘めている。とはいえ、それだけで人口の分散が進むと楽観視することはできない。情報や文化が集積し伝統的な社会規範に縛られない自由に満ちた大都会に住む魅力は捨てがたいものがあるからである。ここでは女性に話をしぼろう。

 

【《女性活躍推進》《女性登用》政策は人口分散を可能にする】

なぜ女性は男性より東京に惹かれるのだろうか。それは地方圏より東京の方が女性にとって住みやすく生きやすいからだ。私が実施した新宿区の壮年ひとり暮らし調査によれば、女性の多くは都内に住むことを肯定している。暮らしの便利さ、世間の監視の目のない自由さ、女性のキャリアを築く可能性があることが魅力となっている。いっぽうで、地方圏で実施した調査によれば、女性は結婚や子どもを持つことへの社会規範の強さに悩み、三世代同居規範、男子優先の風習、力を発揮できる職場や地域社会となっていないことを嘆いていた。テレワークが地方圏への人口移動を進めるかどうかは、女性にとって地方圏が魅力的かどうかと係わっている。《女性活躍推進》《女性登用》という政策を人口分散を推進するために位置づける必要がある。

 

 

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コメント: 1
  • #1

    土井 裕子 (金曜日, 21 8月 2020 13:22)

    まさにその通りですが、女性側にも少し問題があるように思います。女性の時代だと言われながら、それに合わせて育ててもらっていない女性が多いのも現実です。最近は延岡市でも研修や出張に女性も出してもらえるようになってきました。かっては、女性は男性のアシスタントでコピー取りやお茶の出し方を褒めることで良しとされ、企画立案、予算立て、根回し、事業実施、結果報告などの手間暇かかる一貫した作業の指導を受けることはほとんど無かったし、女性もそれで良しとしてきたきらいがあります。最近は優秀な女性も多く、都会だとその時代の流れをいち早く察知している人も多いので、女性にもキャリアを作る指導がされているのですが、田舎ではまだまだ「女の分際で」などどほざくじい様はたくさんいます。