格差社会を浮き彫りにした米国・英国のコロナによる死亡者 

世界でもっとも多数の死亡者を出し続けているアメリカで、だれが死に直面したのかを語る情報がつぎつぎに伝えられている。白人と黒人の健康格差が大きいことは以前から明らかにされてきたが、新型コロナウイルスによる死亡率にくっきりと刻まれていて、その数値には驚きを禁じえない。

 米疾病管理予防センター(CDC)の発表によると、人種・民族によって死亡率に違いがあり、なかでも黒人グループの死亡率が著しく高いという。たとえばウイスコンシン州では、黒人が人口全体に占める割合は6パーセントと少ないのに対して、死亡者の半分が黒人である。ヴァージニア州リッチモンドでは、死亡者のうち1人を除いてすべてが黒人だった。シカゴでは、黒人が人口に占める割合は30%だが、死亡者に占める割合は70%に達しているという。       

 糖尿病、慢性肺疾患、循環器系の糖尿病、慢性肺疾患、循環器系の険に入っていないこと、医療従事者側の差別や偏見などである。

 

 アメリカに次いで多くの死亡者を出している英国でも同様の傾向が把握されている。黒人女性は白人女性の4.3倍、黒人男性は白人女性の4.2倍だったという。黒人だけではない。バングラディッシュ、パキスタン、インドの出身者やそれらの民族的ルーツをもつ人たちも、死亡リスクが高い傾向にあるという。 

 

 死亡率が際立って高い背景に複雑な背景がある。人口密度が高く大気汚染などもひどい地域に住む人々の割合が高いこと、世帯人員が多いこと、刑務所やホームレスのシェルターなどソーシャル・ディスタンスを確保することが困難な場所により多い傾向などである。また、小売、ドライバー、ごみ回収、福祉サービスなどのエッセンシャルワーカーとして働く人が多く、ウイルスにさらされやすい。それにもかかわらず、仕事を休めば賃金を得ることができない低所得者なのである。

 

  健康格差の原因には歴史的な背景もあって、コロナ禍による高い死亡率に対して簡単に解決できることではないというのが大方の認識のようだ。米国と英国の高い死亡率は、コロナに対する初動の遅れだけが原因ではない。移民国家で社会格差が大きいことが多数の死亡者を生んだといえるだろう。